丈夫な「白い野ばら」が今年もたくさんの小さな白い花を咲かせています。
ただ、私が30年近く前ここに植えたのは「白い野ばら」ではなく
大きな一重の花を咲かせるバラ「赤いアルティッシモ」でした。
白い野ばらは赤いアルティッシモの台木だったのです。
「赤いアルティッシモ」はとても丈夫な品種で、大きなアーチを作って楽しんでおりましたが、
原発事故後、複葉が完全に分離していない葉をつけるようになり、
そしてしばらくすると枯れてしまいました。
一方、台木として使われていた「白い野ばら」は
・・・同じように異常な葉をつけて続けてはいますが
「根」があるからなのでしょうか、
今年も元気に花を咲かせております。
さて、
大昔には「接ぎ木によって台木と接ぎ穂の間で雑種(新しい遺伝子型のもの)が生まれる」
などという事を言う学者もおりましたが、
それは間違いで、
現代では台木と接ぎ穂の接触点には「接木(つぎき)キメラ」
つまり、台木の遺伝子型を持つ細胞と接ぎ穂の遺伝子型を持つ細胞の混合物ができる、という事がわかっています。
我が家にかつて存在していた「赤いアルティッシモ」は
蔓も葉も花もどこを取っても「赤いアルティッシモ」であり
外から見れば台木の白い野ばらと一体のように見えましたが
遺伝子型は変わらず「赤いアルティッシモ」のままなので、
初夏になればたくさんの赤い大きな花を咲かせ続けておりました。
白い野ばらの影響は受けることはなく。
一方、台木の「白い野ばら」にしても
「赤いアルティッシモ」の枝に圧倒され続けていたかもしれませんが、
遺伝子はずっと変わることなく
「赤いアルティッシモ」が消えてしまった今、
「白い野ばら」はたくさんの枝を伸ばし、
たくさんの小さな白い花をつけ、
花が終われば実もできます。
台木と接ぎ穂
それぞれ良い特性を持っていて
それは接がれることで互いの弱さを補う事が出来ます。
しかし、台木は台木、接ぎ穂は接ぎ穂、
それぞれの遺伝子型は初めに決められた通り。
変わらないし
変えてはいけない。
人間が気付こうが気付くまいが
昔も今もそういうルールです。